移動局Aは、鷲峰山、近江大橋、野洲川河口と3地点で基地局との通信を試みた。
●移動地A1 鷲峰山金胎寺下の林道(京都府和束町)
 距離 44km
 状況 全く受信できなかった。いずれのアンテナ(コリニア、15エレループ八木)でも同様であった。
 場所 林道で比較的視界が開けたところ。
 設置予定のアンテナタワーより低いところであったため、前方の尾根に遮られていると思われる。当日は遠くがかすんでいたので琵琶湖方向を目視で確認することができず、アンテナの方向を正確に合わせることが困難であった。近くで見通しの良い場所を探したが、良さそうな場所がなかった。
●移動地A2 近江大橋付近(大津市、琵琶湖湖畔)
 距離 27km
 状況 全く受信できなかった。15エレループ八木を使用。
 場所 湖岸道路沿いのパーキングエリア。
 開けた場所ではあるが、基地局を目視で確認できていない。地上高が低いこともあり、琵琶湖大橋や小高い地形のなどに遮られていると推測される。
●移動地A3 野洲川河口(滋賀県中主町、琵琶湖湖畔)
 距離 12Km
 状況 通信することができた。(パケット到達率は100%)15エレループ八木を使用。
 場所 野洲川河口の土手の上。基地局周辺が目視できる。

 移動局Bは、伊吹山ドライブウェイ、琵琶湖畔のびわ町、宇曽川河口(彦根市)で基地局との通信を試みた。
●移動地B1 伊吹山ドライブウェイ(滋賀県伊吹町)
 距離 56km
 状況 IPSMの緑色LEDが周期的に点灯するが、APFSルータにルートが登録されない。
 場所 ドライブウエイ途中の琵琶湖側に開けたところ。かすんでいたため基地局周辺は目視できていない。開けている左端に近い方向と思われる。移動局近傍では基地局に向かって左側、基地局近傍では右側に山があり、マルチパスの影響を受けやすい環境。
 IPSMでは同期の捕捉はできているが、誤り訂正ができないものと思われる。双方とも高利得単一指向性のアンテナを使用することで通信可能となる期待が持てる。

●移動地B2 びわ町南岸(滋賀県びわ町、琵琶湖湖畔)
 距離  30Km
 状況 全く受信できなかった。
 場所 湖岸道路沿いのパーキングエリア。
 開けた場所ではあるが、基地局を目視で確認できていない。基地局周辺の地形から基地局から見通しが可能と思われる最も左側の方向にあたる。地上高が低いこともあり、基地局近傍の小高い地形などに遮られている可能性もある。
●移動地B3 宇曽川河口(彦根市、琵琶湖湖畔)
 距離 23km
 状況 ここでは基地局の信号を復調でき、移動局からの信号も問題なく届いた。APFSルータのパケットの到達率はどちらの方向も100%で、Webのブラウジングも全く支障なくできた。
 場所 河口の土手。周囲は平地。基地局周辺が目視できる。

 これらの結果より、今後の運用においては以下のような点について工夫すべきであるということがわかった。
1.アンテナの方向を正確に合わせる方法
 地図、コンパスによる方法の他に、FM機など他の送信機による電波をガイドにアンテナ指向性を含めた方向合わせが望まれる。
 また、正確な位置が把握できるようGPSなどの利用。
2.Sメータなどによるの信号強度、回線品質の測定
 信号強度を測定することで、アンテナの方向合わせやマージンが求められるようにしたい。
 IPSMで信号が受信できる場合は、パケット中の誤りの数を表示したり、アッテネータと組み合わせて簡易的に代用できるかもしれない。
3.移動実験のしやすいの機器
 移動先での設営、稼動の容易なようにしたい。特にシステム全体を電池で動くようにするなど。

2.2 第2回琵琶湖通信実験

 前報に示した山上局−地上局(クライアント局)の構成において、次の事項が懸念された。

「送信出力が低いことなどから通信可能距離がそう長くないと考えられるが、実際の山上局−地上局間は近くない」

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