このことは、山上局の電界強度が(標高のより低い)地上局において充分である地域を形成できるかどうかということを示す。
 一般に山上局は全方位に地上局が配置される可能性があり無指向性のアンテナが望まれるが、それらのアンテナ(特に山上レピータ・デジピータ局で多く使用されるコリニア型)は水平より上向きの輻射が主であり、直進性の高い周波数帯においては、なおさら、地上局向けには不利である。
 図(Fig.1)に示すように、山上局と通信するためには、山上局を中心とした内円と外円の間のドーナツ状の地域に地上局が位置することが必要である。

Fig.1 山上局から通信可能な地域

 そこで、山上局として
A.方位に無指向性を優先したモデルとしてコリニア型アンテナを使用するケース
B.下向きの輻射を優先したモデルとして八木型アンテナを複数方向に向けて使用するケース

の2つのケースを、内円領域を想定した場所として近接地でありかつ山上局から見て俯角の大きい地点での実験を計画した。
 Bについては、実際の山上局では、地上が直視できる方向がある程度は限定される上、地上局が位置しうる場所(多くは住所地となる市街地、集落)の方向はより限定できるため、2〜3方向を決めることができるであろうことからの代替モデルである。

 地上局は、一つの山上局に向けて利得のある多エレメント八木型アンテナを使用するモデルを想定する。

 第2回琵琶湖通信実験では、滋賀県のびわこバレィ(スキー場)周辺の傾斜地(Fig.2)にて、前述の山上局モデルの比較、ならびにエレメント数の異なる八木アンテナの垂直方向の特性(信号強度が最大となる方向)を調査する。併せて、Bにおける複数方向に向けた八木型アンテナで同時間帯に複数局間で通信できることを確認する。

 内円部分は、山上局の下向きの輻射が弱い地域であり、外円以遠は空間減衰からも受信限界以下となる。
 この地域をいかにして広くするか、より有利なアンテナの構成は何か、山上局および地上局のモデル構成を確立する必要があると考えた。

 理想的には、
○山上局は、方位に無指向性で水平より下向きの輻射を得られることが望ましい。
○地上局は、山上局に向けてなるべく利得が得られることが望ましい。

Fig.2 第2回琵琶湖通信実験地点(びわこバレィ周辺)

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